BUMP OF CHICKENの「K」はアルバム『THE LIVING DEAD』に収録されている楽曲です。
「K」の意味は「聖なる夜(Holy Night)」という名前の猫が死んだ後、新たな名前 「Holy Knight(聖なる騎士)」をつけたことに由来します。
疾走感あふれるサウンドと黒猫が登場する物語調の歌詞が特徴で、ファンの間でも人気の高い曲となっています。今回は藤原基央さん語った「K」の歌詞の意味と解釈について紹介します。
「K」基本情報
「THE LIVING DEAD」(2000年)
作詞・作曲 | 藤原基央 |
編曲 | BUMP OF CHICKEN |
作曲時期 | 1999年12月〜2000年1月 |
音源制作 | 1999年12月〜2000年1月 |
録音場所 | aLIVE RECORDING STUDIO(東京都世田谷区) |
リリース | アルバム「THE LIVING DEAD」(2000年3月25日) |
ライブ初披露 | 2000年3月27日「ツアーポキール」千葉LOOK公演 |
『THE LIVING DEAD』物語調の楽曲のはじまり
1999年末〜2000年1月、BUMP OF CHICKENはインディーズ2枚目のアルバム制作に臨みます。レコーディングスタジオは短期間しか使用できず、ボーカル・ギターの藤原基央さんはレコーディング日までに新曲を揃えておく必要がありましたが曲作りにつまづきます。
藤原 – “K”がピークだったんですよ、詞が書けないピーク。だから”K”から物語形式にしちゃおうかなとか思って。
引用元:2000.06 ROCKIN’ ON JAPAN p.110
そこで考えた藤原さん「架空の物語」を歌詞にすることで作曲ペースを早めることにします。
「K」のストーリー
歌詞に登場するキャラクター
■「黒猫」 ・・・街から忌み嫌われていた黒猫 「絵描き」の恋人に手紙を届けて死ぬ
街で嫌われていた「黒猫」は若く貧しい「絵描き」に見つかり、孤独な「絵描き」と「黒猫」の二人はやがて友達になる。貧しさゆえ倒れた「絵描き」から恋人に渡してほしいと手紙を受け取った「黒猫」。街びとに石を投げられながらも「絵描き」の恋人に手紙を届け、「黒猫」自身も息絶えた。
『ユグドラシル』(2004年) に収録されている「embrace」は「K」と同じ世界観の話だという説があります。「黒猫」を見つけた「絵描き」の視点で書かれた歌詞という解釈です。
「K」の曲名の意味
若い絵描きに「聖なる夜 (Holy Night)」と名付けられ黒猫が、手紙を届けて息絶えた後、絵描きの恋人にアルファベット「K」を一文字付け足して「聖なる騎士 (Holy Knight) 」と名付けられました。この一文字が「K」のタイトルの由来になっています。
物語序盤
K 0:10〜
なんとでも呼ぶがいいさ 俺には消えない名前があるから
「ホーリーナイト」「聖なる夜」と呼んでくれた
引用元:K / 作詞作曲 藤原基央 (2000年)
最初に「Holy Night」(聖なる夜)と名付けられた猫。
物語終盤
K 3:38〜
手紙を読んだ恋人は もう動かない猫に
アルファベットひとつ加えて庭に埋めてやった
聖なる騎士を埋めてやった
引用元:K / 作詞作曲 藤原基央 (2000年)
生き絶えた猫は「Holy Knight」(聖なる騎士)という新たな名前を与えられます。
「綾波レイ」→「R.A」(イニシャル)→「アルエ」のタイトルを付けた藤原さんらしいアイデアです。
藤原「英語を勉強してください(笑)」
藤原さんの元には「K」の意味を尋ねるファンレターが届きました。
藤原 – 「K」に関してめっちゃくちゃ誤解があって、『Kは黒猫のKですか』って、ファンレターもらっちゃって。俺は黒猫のKってタイトル付けるような浅はかな人間に見えるのかって、すごいショックだったんですけど。もっと詞読んでください。詞読んで英語勉強してください(笑)
引用元:2000.06 ROCKIN’ ON JAPAN p.110
さらに言えば「英語を勉強してください」という藤原さん自身の英語(「ナイフ」)も文法的にはめちゃくちゃなので、そこを棚に上げて物を言う当時の尖りっぷりが読み取れる文章です。
「K」の歌詞の意味 -「苦しみの中の喜び」を歌った曲
藤原 人生ってヤなことの方が多いと思うんですよ。でも、そん中でひとりだけ自分のことを愛してくれる人がいたらねぇ。1回だけ良いことあったら、その1回で全て帳消しに出来るぐらい喜べる素晴らしいことだと思うんですよ。なんかそういう瞬間を切り取りたかったですね。
引用元:2000.06 ROCKIN’ ON JAPAN p.110
藤原さんは「自分が書く曲はすべて前向きである」とインタビューでよく答えます。悲劇的な曲、ドロドロした曲、凶暴な詞の曲でもすべて前向きな意味が込められてる、と。「K」はそういった深層的な歌詞の意味を表現した初期の曲と位置づけられます。
当初は「物語」に抵抗感があった藤原
藤原さんはもともと作詞家として「実体験に基づかない歌詞」に抵抗感を持っていました。
藤原 – 現実世界では自分は猫ではないし、絵描きでもない。この曲まで実体験に基づいてない歌詞は本来書きたくなかったんですよ。
引用元:2000.06 ROCKIN’ ON JAPAN p.110
それまで「くだらない唄」や「ガラスのブルース」など等身大の歌を歌ってきた藤原さんにとって、自分が体験していないことを想像して綴ることは嫌だったといいます。(既に「アルエ」や「ノーヒットノーラン」で既に妄想…想像の歌詞を書いていますが…。)
2000年代にFlashアニメとして流行
FLASHアニメ「K」の一コマ
実体験に基づかない歌詞に抵抗を持っていた藤原さんの意図とは裏腹に、ストーリー性あふれる歌詞がFLASHアニメ制作に繋がりインターネット上に拡散されます。結果的に「K」「ベストピクチャー」「ラフメイカー」といったストーリー性のある歌詞が世間のBUMP OF CHICKENの認知度を向上させ、ライトファン層(いわゆるにわかファン)の創出に繋がりました。
「THE LIVING DEAD」における「K」の意義
「K」で黒猫の物語をきっかけに、他のアルバム曲もストーリー性のある架空の物語のように書かれます。『THE LIVING DEAD』は「物語集」としてBUMP OF CHICKEN唯一のコンセプトアルバムになりました。
もし「K」がなければ『THE LIVING DEAD』は全く違うアルバムになっていたと思えば、物語楽曲の序章となった「K」の存在意義はとても大きなものと言えるでしょう。
ライブ演奏記録
embedded from Twitter@boc_chama 2016.04.09
演奏回数 | 136回 |
演奏頻度 | ★★★★☆ |
初披露 | 2000年03月27日「ツアーポキール」千葉LOOK |
最終演奏 | 2018年02月10日「TOUR 2017-2018 PATHFINDER」さいたまスーパーアリーナ |
演奏ツアー | 2000年「ツアーポキール」*全公演演奏 2000年「プロポキール秋」*全公演演奏 2001年「スターポーキングツアーズ 2001」*全公演演奏 2001年「surf porkin’」*全公演演奏 2002年「POKISTA 21」*全公演演奏 2002年「LOVE & PORKIN」*全公演演奏 2003年「NINJA PORKIN」*全公演演奏 2004年「MY PEGASUS」 2004年「PEGASUS YOU」 2006年「run rabbit run」 2008年「ホームシップ衛星」 2012年「GOLD GLIDER TOUR」 2013年「WILLPOLIS」 2016年「BFLY」*全公演演奏 2017-2018年「TOUR 2017-2018 PATHFINDER」 2022年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」 |
「K」は「ツアーポキール」から「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY”」までコンスタントに本編演奏されています。ツアー2本に1本はレギュラーセトリに入る勢いです。
「ファンの人気が高い」とメンバー自身が認識している数少ない楽曲で、同期SEを流す必要がないためセットリスト本編やアンコール曲として色々な場面で演奏されました。
インディーズ時代はギターソロを藤原が弾いていた
インディーズ時代のライブでは、「K」も含めて「THE LIVING DEAD」楽曲のギターソロの全てを藤原さんが演奏していました。理由はギタリスト・増川弘明さんの技術不足とレコーディングした藤原本人の方が弾いたほうが早かったからです。
メジャーデビュー後、少しずつギターソロのパートは藤原さんから増川さんに移行していきますが、「K」のギターソロは比較的遅く(2003年)まで藤原さんが弾いていました。
「K」ライブ映像作品
アンコールと本編セットリストでは演奏が違う!?
実はアンコールで演奏される時はコーラスが入っていません (♪ Holly night〜huh〜の部分)。これはアンコールはその場で決めているので(といってもパターン化していますが)、『K』のコーラスの練習をしていないからです。実際には出来るはずですが、”その場で決めていますよ、準備していませんでしたよ”という心の態度のためだと思われます。
以上、Kについて紹介記事でした。これからもライブで演奏されるであろうこの曲を聴くときにふとこのエピソードを思い出していただければ、また違った聴き方ができるのではないでしょうか。