「Spica」は2018年11月に発表されたBUMP OF CHICKENの楽曲です。「BUMP OF CHICKENとしては珍しく電子音がサウンドの主体となっており、打ち込みとバンドサウンドが有機的に絡み合うaurora ark期の珠玉のバラードナンバーとなっています。
Spica 楽曲基本情報
作曲時期:2017-18年2-3月まで
録音時期:2018年3月以降
リリース①:2018年11月14日 「話がしたいよ/シリウス/Spica」
リリース②:2019年07月10日 「aurora arc」
TVアニメ『重神機パンドーラ』EDテーマとして書き下ろし
12月26日、PATHFINDER アスティとくしま公演にむけて移動中の4人。この頃、藤原の頭の中には「Spica」の歌詞が出来始めていたのだろうか。Image embedded from Twitter@boc_chama
2017年、TVアニメ『重神機パンドーラ』のOPテーマとEDテーマの2曲の書き下ろし依頼がBUMP OF CHICKENへ届きます。藤原さんは『重神機パンドーラ』製作総監督の河森正治氏と打合せをし、「アニメの世界観」と「BUMP OF CHICKEN」が重なるテーマをヒントに書き下ろしました。このタイアップで生まれたのが「シリウス」「Spica」の2曲です。
歌詞の意味・解釈
「Spica」の意味はおとめ座の恒星
Spica (スピカ)はおとめ座で一番輝いている恒星です。スピカはひとつの星ではなく、複数の星が重なってひとつの星のように輝く「連星」で、藤原さんはそこに良さを感じタイトルにしました。
命の意味としての「いってきます」
embedded photo from Twitter@boc_chama
「どこからだって帰ってこられる いってきます」 ーーー、「いってきます」という言葉は今まで使われてこなかった歌詞です。藤原さん本人の解説によると、単純に家を出て帰ってくる「いってきます」の意味ではなく、「生命としての出発点、向かう場所」だといいます。
藤原 – 渋谷の街を歩いてる人も、世界中どの街を歩いてる人も、何かの途中なんです。(中略) その向かってるところが帰るところなのか、もう帰れなくなってるのかわからないけど、そういうのってなんなのかなって考えた時期があって……というのが、この曲の<いってきます>や”シリウス”の<ただいま おかえり>には表れてるんだと思う
出典:MUSICA 2019.08 vol. 148
寿命の長さであれ、生きる目的であれ「今が途中であること」が重要なポイントだといいます。そういえば、「銀河鉄道」(2005年) の歌詞にも「人は年を取るたび 始まりから離れていく 動いていないように思えてた 僕だって進んでる」という歌詞がありますね。
打ち込みとバンドによる有機的なサウンド
藤原 – もはや俺達も打ち込みを入れることに疑問がないんですよね。
出典:MUSICA 2019.08 vol.148
Spicaの特徴的な打ち込みパート
・数種類の異なるリズムで刻んだ「カチチチチチ…」
・サビのフィルで入るスクラッチ
BUMP OF CHICKENの楽曲でここまで打ち込みトラックが表に出ることは珍しいです。リズムトラックは完全に打ち込みサウンドになっています。その一方、アコースティックギター、エレキベースもしっかり鳴っていて電子音と有機的に絡み合っています。
直井のベースラインがコードワークを引き立てる
Imaged embedded from Twitter@boc_chama
数種類のリズムの「カチチチチチ…」という音、電子音の分散和音といったウワモノ要素が全面に出ているサウンドではグルーブが不安定になります。その中でサウンドの背骨の役割を果たしているのが直井さんのベースラインです。
小節頭でしっかりルート音を鳴らす一方で、リズムや遊びの部分できっちり曲調やベース自身のウワモノ感も演出しています。シンセベース寄りの音作りも素敵です。さらっとすごいことをやっている直井さんのベースラインに耳を傾けて聴いてみるのはいかがでしょうか。
ライブ演奏記録
PATHFINDERでサプライズ初披露
2018年2月11日 PATHFINDER さいたまスーパーアリーナ公演
「Spica」は発表前にライブでサプライズ披露されました。2018年2月11日、『TOUR PATHFINDR』ツアーファイナルとなる埼玉公演でアンコール後に感極まった藤原さんが1コーラスだけ弾き語りしました。エレキギターによる指弾きの弾き語りです。
aurora arkで全公演セットリスト入り
2019年9月12日 aurora ark 大阪京セラドーム公演で「Spica」を演奏するBUMP OF CHICKEN Twitter@boc_chama
「Spica」は全国ツアー『aurora ark』にて全公演で演奏されました。アリーナ・ドーム公演ではスクリーンにユグドラシルの木を彷彿とさせる緑色の大きな樹木が映し出され、幻想的な空間を作り出しています。
ライブ使用機材と演奏パート
使用機材
藤原基央 | Gibson製 Les Paul Special Historic Collection |
増川弘明 | Fender製 Custom Shop Jaguar 1962 |
ギタリストの増川弘明さんはフェンダー製ジャガーを使用、藤原さんはレスポールスペシャルを使用しています。藤原さんはギターにほぼ触らず、増川さんが終始アルペジオを演奏しています。サビフィルのギターとベースのユニゾンパートは直井さんのみが演奏、増川さんはアルペジオを通奏しながらコーラスをしていました。
藤原のメロ替えが聴きどころ
「Spica」のライブでの魅力は藤原さんのメロディアレンジです。特に東京ドームでのファイナル公演ではCD音源とは違うメロディをAメロ、Bメロ、サビで歌っていました。ライブならではのアレンジが魅力的です。
「Spica」ライブ映像収録作品
映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER SAITAMA SUPER ARENA」* |
映像作品「aurora ark (予定)」 |
*1コーラスのみ演奏
以上、BUMP OF CHICKENの「Spica」について歌詞の意味や制作エピソードを解説しました。この記事を読んで下さったみなさんにとって新しい聴き方の種になれたら幸いです。読んでくださりありがとうございました。
アルバム『aurora arc』全曲解説はこちら!