5th Album『orbital period』

BUMP OF CHICKEN「才悩人応援歌」藤原基央が語る歌詞の意味と制作エピソード

5th Album『orbital period』

「才悩人応援歌」はBUMP OF CHICKENのアルバム「orbital period」の収録曲です。

バンプらしさを感じさせる疾走感と藤原さん特有の自嘲的歌詞が秀逸の曲です。

「才悩人応援歌」の意味は、“才能に悩む人への応援歌”という藤原さんによる造語です。一体、どのようにして「才悩人応援歌」は作られたのでしょうか。この記事では制作エピソードを紹介します。




「才悩人応援歌」基本情報

タイトル 才悩人応援歌
収録時間 4分18秒
作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2006年年末〜2007年1月
録音時期 2007年3月
収録作品 2007年12月19日「orbital period」M-04
ライブ初披露 2008年1月10日「ホームシック衛星」ZEPP TOKYO

「才悩人応援歌」は「orbital period」のアルバム曲です。アルバム曲としては「ハンマーソングと痛みの塔」「飴玉の唄」に続いて3番目に書かれた初期制作曲です。

 

「才悩人応援歌」の意味

「才悩人応援歌」は “才能に悩む人への応援歌”という藤原さんによる造語です。”才能”ではなく”才悩”という同音異義を使用している珍しい楽曲でもあります。

藤原さんはどのようにして「才悩人応援歌」を書いたのでしょうか。

「才悩人応援歌」作曲エピソード

藤原基央さんは、2006年年末〜2007年1月にかけて「才悩人応援歌」を書きます。作曲時期に関しては、メンバー自身の発言として「2006年終盤」( What’s IN!? 2008年1月号)と「2007年1月」(MUSICA 2008年1月号)と分かれています。

シングル「涙のふるさと」

BUMP OF CHICKENの活動としてはシングル「涙のふるさと」をリリース後の時期です。

リズム遊びから生まれた「才悩人応援歌」

藤原さんは《変化するリズムとコード進行》という趣旨で音遊びをして新曲作りをします。

藤原 – きっかけはリズム遊びだったんですよね。リズムが気持ち良くも悪くも変わっていくという、よくわからないものを模索していて、その変化に伴いコードも変わっていくと言うのを探していて。

引用元:「MUSICA」2008年1月号

BUMP OF CHICKENの楽曲はサウンド先行で生まれることがあります。「乗車権」「メーデー」も藤原さんの音遊びから生まれた楽曲です。

こうしてイントロのリズムトリック、珍しいBメロ転調(D♭ → B♭)、1小節だけ入る変拍子など実験的なアプローチを多く使った「才悩人応援歌」を作曲します。

「才悩人応援歌」歌詞の意味

藤原さんは「才悩人応援歌」の歌詞の意味について《自分と音楽の関係性》を歌っている曲だと明かします。その上で主義主張を込めたのではなく《事実を歌っただけ》と強調します。

藤原 – 僕はとにかく事実しか歌ってないっす、この中で。

引用元:「MUSICA」2008年1月号

藤原基央と音楽の関係性

藤原さんは一般的に音楽はただの娯楽であることを理解しつつも、藤原さん自身にとっては衣食住のどれかよりも大切なもの、同じくらいの大切さだと言います。

藤原 – 僕にとっては、衣食住のどれかよりも音楽が大事な気がするんだな。今までの人生の中で、それはもう紛うことなき事実なんですよ。

引用元:「JAPAN Vol.327」

さらに《音楽によって衣食住が脅かされたこともある》といい、10代後半で東京に出て「ガラスのブルース」の歌詞ようなその日暮らしの生活をしていた経験から来る実体験だと言えます。

藤原さんは遅くとも2004年12月時点でクレジットカードを所持していませんでした(そのため韓国ライブ入国時にスタッフのクレカを代わりにデポジットで使用したほど)。「天体観測」やアルバム『jupiter』『ユグドラシル』の大ヒットを記録して、莫大な(おそらく億単位の)印税収入を得た後も現金のみで生活していました。本当に音楽以外のことに興味がないことがわかります。

才悩人応援歌  0:31〜
ファンだったミュージシャン
新譜 暇つぶし

売れてからは もうどうでもいい

引用元:才悩人応援歌 / 藤原基央 (2007年)

この部分に藤原さんのリアルがあふれていると思います。1ミリでもそういう気持ちがよぎった事実を恥ずかしげもなく独白しています。

“がんばれ”という応援には覚悟が求められる

「才悩人応援歌」には《応援歌》という単語が使われているものの、人を応援するには生半可な気持ちではできないと藤原さんは語っています。

才悩人応援歌  0:31〜
生活は平凡です 平凡でも困難です
星の隅で 継続中です
声援なんて皆無です 脚光なんて尚更です

引用元:才悩人応援歌 / 藤原基央 (2007年)

「才悩人応援歌」では非常にリアルで辛辣な歌詞が続きます。これが藤原さんにとってのリアルであり、心の吐露なのだといいます。

藤原 – (『がんばれ』という言葉を)できればあんまりいいたくない言葉で(中略)『がんばれ』って言いたいような相手はとっくに頑張ってて。僕なんかの出る幕じゃないっていうか。

引用元:

藤原さんは社交辞令的に「がんばれ」と声を掛ける場面があったとしても、心を込めて『がんばれ』と思うのは覚悟が必要だといいます。

《優しさとは何か》について綴った「ひとりごと」など『orbital period』期には抽象的な感情や行為について根源的に問うことが藤原さんの歌詞の素晴らしさです。

「才悩人応援歌」制作エピソード

一睡もせずにスタジオで歌った

藤原さんはプリプロ( =プリプロダクション)の前日に、楽曲のアレンジについてあれこれ考えていたものの、最終的に一睡も出来ず、寝ていない状態でスタジオへ向かいます。

結局アレンジが決まっていなかったため、藤原さんはエレキギターのみで歌ったデモ音源を作成しました。

イントロに驚かされたメンバー

「才悩人応援歌」のデモテープを聴いた他の3人のメンバーは、リズムトリックの複雑さに驚いたといいます。イントロのリズムトリックめて、デモテープの段階からキメ(リズム構成)は考えられていました。

升  – もうなんでここから歌がはじまるのかさっぱりわからない。どっからはじまるんだろうって(笑)。(イントロのドラムについて)最初にエレキギターだけあって、ドラムの打ち込みはなかったんでみんな(とディレクター)で一緒になって考えた (B-pass)

増川 – 『え、どこから入るの?』っていう。(デモテープを聴かせてもらった)その日にすぐ合わせて。だから最初は書きましたね。符割りを教えてもらって。聴けばちゃんとロジカルに組み立てられてるものなんで。そこがすごい。かっこ良くきめられたものだっていう (B-pass)

「才悩人応援歌」のイントロは、ライブではハイハット(シンバル)を5回鳴らしてから始まります。これは1拍目を休符にして2拍目から入るリズムのためです。

増川さんががレコーディングについて結講詳しく話しているは珍しく、嬉しいですね。付割とか書き起こしできるんですね。

 

サビのギターリフにライトハンド奏法(タッピング)を使用する珍しい曲でもあります(『彼女と星の椅子』とこの曲だけである)。

ライブ演奏記録

演奏回数 57回
演奏頻度 ★★★☆
初披露 2007年1月10日「ホームシック衛星」ZEPP TOKYO公演
演奏ツアー 2008年「ホームシック衛星」*全公演演奏
2008年「ホームシップ衛星」*全公演演奏
2008年「ROCK IN JAPAN FESTIVSL 2008
2015年「BUMP OF CHICKEN Special Live 2015
2017年「TOUR 2017-2018 PATHFINDER
2022年「Silver Jubilee at Makuhari Messe
2022年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」

『orbital period』期は抽象的行為の因数分解をする作詞アプローチが取られ、「ひとりごと」では《優しさとは何か》について歌っています。

 

藤原基央さんは《曲を構成する3要素は「メロディ」「コード進行」「リズム」である》と様々なインタビューで語っています。この”曲”に”詞”が結合して初めて「BUMP OF CHICKENの楽曲」になります

(閉ざされたドアの向こう側でしか)体感出来ないも一体感があるんじゃないかな、音楽と自分との。自分て言うのは僕だけじゃなく、リスナーって意味もあって。『元気になる、癒されるとかそういうための曲じゃないけど、大丈夫?』とか『それでよかったら聴いてくれない?』という宣言かもしれない。