楽曲解説:ギルド vol.1 藤原はなぜ人間を「仕事」と書いたのか 解釈と歌詞の意味

ギルド:基本情報作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2003年末~
リリース:2004年8月25日 『ユグドラシル』
ライブ初披露:2004年9月17日 MY PEGASUS at ZEPP TOKYO

「ギルド」はBUMP OF CHICKENの『ユグドラシル』に収録されているアルバム曲です。詩人・藤原基央の代表作とも言える深層的で人間の核心を捉えた歌詞は、多くの人に影響を与えました。この記事ではこのギルドの歌詞の解釈、意味を紹介します。

いきなりですが、質問です。

あなたは、人間ですか?

こんなことを街で聞いたら逆に心配をされてしまうかもしれません。もしくは殴られたり、怒られたりなんて。私たちは人間ですし、みんな生きています。当然です。

でもこの”当然”が当然でないかもしれないと思い出したら、すごく不安になりますよね。

ギルドはこんな「当然が当然出ないかもしれないという恐怖」から生まれた曲でした。



弦を張り替えながら思い浮かんだ詞

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2003年暮れ、ボーカル・ギターの藤原基央さんがスタジオでギター弦を張り替えていた時のことです。

「人間という仕事を クビになってどれくらいだ」という歌詞が思い浮かび、その場で紙に1曲分の歌詞を書き上げました。

藤原 – 僕らは今存在している人は、みんな、存在することを選んだ人だと思います。でもなんか、最早ね、あてがわれたのか望んだのか、生きてるのか生かされてるのか、っていう解釈を待たずに呼吸が続いていることがね、少し怖くなったんですよね。そいいうとこからできた曲です。 

自分の意志で生きようとしているのか、それとも日常生活の流れに取り込まれて生かされているのか、考える余地もなく私たちは呼吸をしています。思考ではなく、生理的反応で、身体が呼吸を必要としているからです。

ただ単に「呼吸をしている」という事実、ただそれのみ。その事象について恐怖を藤原さんは覚えたといいます。

<それでも呼吸が続くことは 許されるだろうか>の部分で、思考的な解釈よりもプリミティブな部分(本能や運命)に対して藤原さんは問うているのだと思います。

なぜ人間を「仕事」と書いたのか

<人間という仕事を クビになってどれくらいだ>

藤原さんは「会社員」「アルバイト」と行った職種や肩書きではなく「人間」を「仕事」であると捉えています。

「仕事」っていうキーワードは、何か向かいたい部分があって、そのためには、人間でいるという作業を・・・ちょっとデフォルメする必要があったのかもしれないですね。 – 藤原 – 

藤原さんの心理状態・人生観を「別のもの、行為」になぞらえるデフォルメを手法は『ユグドラシル期』の特徴です。「太陽」や「乗車権」も見られます。

関連記事:楽曲解説:太陽 vol.1 ドアノブに触れるというデフォルメの曲

「当然」は保証されていない

藤原さんは、当たり前に存在していること、呼吸していること、生きているという<当然>を<当然ではない>のかもしれないと表現します。

「人間という仕事」に必要なアイテムは何でしょうか。アイテムの前にライセンスが必要だったりして。こんなことを考えながら昨日の昼下がりに川沿いの桜並木を散歩しました。- 3.30 藤原基央の手紙 – 

私たちは人間でいることが当たり前ですよね?でも、もしかすると人間でいるためには<ライセンス>が必要なのかもしれません。そしてその人間であるための<ライセンス>を奪われたら、一体私たちは何なのでしょうか。

現実世界でも、道を踏み外してしまった人、友人の輪から外れた人、家庭が崩れてしまった人、それまで当たり前だったことがそう出なくなることがあると思います。その結果に自分の意思があるにせよないにせよ、それでも呼吸はつづくのです。

自分自身の意思とは関係なく自分自身を続けていかなきゃいけない時もあるんですよね。ということを淡々と歌ってるんでしょうけれども、歌にするということによって少しでも温度が出た気がします。歌うことの意味はひょっとしたらそこにあるのかもしれないです。- 藤原 –

CDを持ち寄ってアイデアを出し合ったアレンジ

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この楽曲のガガッガ ガガッガというギターのリズムは炭鉱を「ツルハシで掘りすすめる音」をイメージしました。

ベースの直井さんやドラムの升さんは、そのギターに合わせて「ドドッド ドドッド」というリズムの演奏をしましたが、藤原さんからNGをもらい、改めて曲の表現方法について考えました。

直井 – この曲が一番、その瞬間を話し合ったと思う。いっぱいCDを持ち寄って聴いてみたり。(embraceのレコーディング後に時間が空いたため練習時間に費やしていたので)引き出しも増えてて、だから”ギルド”の時にはある程度揃ってたんじゃないかな。 

この頃のチャマさんのベースラインは、もうjupiterの頃のようなエゴではなく「曲の求める姿」を追求して作ったベースラインです。

この曲はオンコードを多用しており、さらに複雑なリズムによってメロディアスなベースラインとはいえません。ただし難解でありながらもコードの土台を支える音を奏でているチャマさんの演奏は、さすがといえます。

以上、簡単なギルドの紹介でした。こんなエピソードがあったと思い出してもらえれば、きっと新たな曲の一面が垣間見えるのではないでしょうか。