楽曲解説:ギルド vol.1 – なぜ人間を「仕事」と書いたのか – 解釈

4th Album「ユグドラシル」収録 / M-04
作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2003年年末

ギルドは4枚目のアルバム「ユグドラシル」に収録されているアルバム曲です。詩人、藤原基央の代表作とも言える深層的で人間の核心を捉えた歌詞は、多くの人に影響を与えました。今回は、このギルドの歌詞の解釈、意味を紹介します。

いきなりですが、質問です。

あなたは、人間ですか?

こんなことを街で聞いたら逆に心配をされてしまうかもしれません。もしくは殴られたり、怒られたりなんて。そりゃ私たちは人間ですし、みんな生きています。当然です。でも、この<当然><当然でない>かもしれないと思い出したら、すごく不安になりますよね。ギルドはこんな当然が当然出ないかもしれないという恐怖から生まれた曲でした。




弦を張り替えながら思い浮かんだ

2003年の暮れ、ボーカルギターの藤原基央さんがスタジオでギター弦を張り替えていた時に、ふと<人間という仕事を クビになってどれくらいだ>という歌詞が思い浮かびます。そしてその場で紙に1曲分の歌詞を書き上げました。

この時の様子をロッキングオンジャパンの編集だった鹿野さんが目撃していました。

僕らは今存在している人は、みんな、存在することを選んだ人だと思います。でもなんか、最早ね、あてがわれたのか望んだのか、生きてるのか生かされてるのか、っていう解釈を待たずに呼吸が続いていることがね、少し怖くなったんですよね。そいいうとこからできた曲です。 – 藤原 – 

自分の意志で生きようとしているのか、それとも生きる意志はなく日常生活の流れに取り込まれて生かされているのか、そんなことを考える余地もなく私たちは呼吸をしています。思考ではなく、生理的な部分、身体が呼吸を必要としているからです。ただ単に「呼吸をしている」という事実、ただそれのみ。その事象について恐怖を藤原さんは覚えたといいます。

<それでも呼吸が続くことは 許されるだろうか>の部分で、思考的な解釈よりもプリミティブな部分(本能や運命)に対して藤原さんは問うているのだと思います。(この部分はあくまで私の主観的解釈です。)

なぜ人間を「仕事」と書いたのか

<人間という仕事を クビになってどれくらいだ>。私が初めてこの曲を聴いた時、この歌い出しを聞いて一気に飲み込まれたことを思い出します。誰もが持っている(であろう)仕事、デスクワーク、学業、自営業。その意味を指す以前に、私たち<人間>という活動が仕事とうまく例えています。

「仕事」っていうキーワードは、何か向かいたい部分があって、そのためには、人間でいるという作業を・・・ちょっとデフォルメする必要があったのかもしれないですね。 – 藤原 – 

デフォルメの曲といえば「太陽」や「乗車権」もデフォルメの曲です。藤原さんの心理状態や人生観を普遍的なものや行為になぞらえる作詞手法です。

そして藤原さんは、当たり前に存在していること、呼吸していること、生きているという<当然>を<当然ではない>のかもしれないと表現します。

「人間という仕事」に必要なアイテムは何でしょうか。アイテムの前にライセンスが必要だったりして。こんなことを考えながら昨日の昼下がりに川沿いの桜並木を散歩しました。- 3.30 藤原基央の手紙 – 

私たちは人間でいることが当たり前ですよね?でも、もしかすると人間でいるためには<ライセンス>が必要なのかもしれません。そしてその人間であるための<ライセンス>を奪われたら、一体私たちは何なのでしょうか。

現実世界でも、道を踏み外してしまった人、友人の輪から外れた人、家庭が崩れてしまった人、それまで当たり前だったことがそう出なくなることがあると思います。その結果に自分の意思があるにせよないにせよ、それでも呼吸はつづくのです。

自分自身の意思とは関係なく自分自身を続けていかなきゃいけない時もあるんですよね。ということを淡々と歌ってるんでしょうけれども、歌にするということによって少しでも温度が出た気がします。歌うことの意味はひょっとしたらそこにあるのかもしれないです。- 藤原 –

レコーディング

この楽曲のガガッガ ガガッガというギターのリズムは炭鉱をツルハシで掘りすすめる音をイメージしました。ベースの直井さんやドラムの升さんは、そのギターに合わせて「ドドッド ドドッド」というリズムの演奏をしましたが、藤原さんからNGをもらい、改めて曲の表現方法について考えました。

この曲が一番、その瞬間を話し合ったと思う。いっぱいCDを持ち寄って聴いてみたり。(embraceのレコーディング後に時間が空いたため練習時間に費やしていたので)引き出しも増えてて、だから”ギルド”の時にはある程度揃ってたんじゃないかな。 – 直井 – 

この頃のチャマさんのベースラインは、もうjupiterの頃のようなエゴではなく「曲の求める姿」を追求して作ったベースラインです。この曲はオンコードを多用しており、さらに複雑なリズムによってメロディアスなベースラインとはいえません。ただし難解でありながらもコードの土台を支える音を奏でているチャマさんの演奏は、さすがといえます。

以上、簡単なギルドの紹介でした。こんなエピソードがあったと思い出してもらえれば、きっと新たな曲の一面が垣間見えるのではないでしょうか。