「クロノスタシス」はBUMP OF CHICKENが2022年4月に配信リリースした楽曲です。
現在、映画「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」主題歌として起用されています。
「クロノスタシス」の意味は視覚と時間の認識の錯覚を指す言葉で、よく知られる例として「時計の針が止まって見える現象」があります。
ボーカル・藤原基央さんはこの言葉にどんな意味を感じて作曲したのでしょうか。この記事では「クロノスタシス」の歌詞の意味と制作エピソードを紹介します。
「クロノスタシス」基本情報
「クロノスタシス」(2022年4月)
作詞・作曲 | 藤原基央 |
編曲 | BUMP OF CHICKEN & MOR |
作曲時期 | 2021年10月下旬 |
リリース | 2022年4月11日 |
「クロノスタシス」の意味
「クロノスタシス」(英語:Chronostasis)とは視覚と認知の間で起きる錯覚を意味する、ギリシャ語由来の言葉です。
時計を見ると秒針が止まって見えてる時、ありますよね。 あれもクロノスタシスの一種で、人間は、速い眼球運動の直後に目にした最初の映像が長く続いて見える、と言われています。
「クロノスタシス」制作エピソード
レコーディングスタジオにてアコースティックギターを触る藤原基央(画像埋込元:Twitter@boc_official_)
ギターのフレーズから制作した「クロノスタシス」
2021年10月下旬、ボーカル・ギターの藤原基央さんは「クロノスタシス」を作曲します。初めにギターでフレーズを作り、それに合わせて歌のメロディを作りました。
この時、ギターのフレーズは歌のための伴奏ではなく、メロディとして成立するアルペジオを意識して弾いたといいます。
藤原 – 要するに歌に対するバッキングという意味でのアルペジオではなくて、アルペジオの旋律そのものがしっかり練り込まれていて、それだけで美しい旋律として聴けるくらいのものにしたいっていう。
BUMP OF CHICKENの唯一無二の楽曲を生み出すのは、藤原さんのフレージングの引き出しの多さです。同様の手法で「記念撮影」「voyager」「flyby」も制作されたことがあります。
藤原さんはこのフレーズを使用して「クロノスタシス」のイントロ〜Aメロのオケを構築しました。
アコースティックサウンドの再構
「クロノスタシス」の特徴的なフレーズはシンセサイザーとエレキギターが使用されています。初期のデモ音源ではこれらはアコースティックギターで弾いていました。
藤原 – でき上がった楽曲を聴いてもらうとイントロの音の感触からは、あんまりギターの感じがしないと思うんですよ。でも実はがっつりギター弾いてるんで、ギター弾くのは好きな人は結構面白いと思うから耳コピして欲しいんですけど。
というわけで、アコースティックギターでフレーズを再現してみました。藤原さんやエンジニアさんが聴いた音はこんな感じだったんでしょうか。
*「クロノスタシス」イントロ修正版
8拍目からメロディが鳴り小節頭のルート音は1拍遅れて入ってくる。藤原が《面白い》と表現したのはこの仕掛けかな pic.twitter.com/ZO1YwsAlwb— 鳥のつぶやき (@memo_bump) April 11, 2022
BPM120の時計の秒針と相関するテンポで、コードより先にメロディが1拍早く入るリズムなのは非常に面白いです。
「クロノスタシス」アコースティックバージョン
2022年4月12日、藤原基央さんの誕生日に「クロノスタシス」冒頭を歌う動画が公式SNSに投稿されました。
お祝いのメッセージをありがとう。
今日まで音楽を続けて来られたのは、
皆さんの、あなたの応援のおかげです。
これからもよろしくお願いします。
昨日新曲「クロノスタシス」がリリースされました。
ぜひいっぱい聴いてほしいです。
ちょっと歌ってみたよ、冒頭こんな感じです。— BUMP OF CHICKEN (@boc_official_) April 12, 2022
ミュートしながらアクセントをつけたリズムで、原曲と異なるアコースティックバージョンになっています。
今回がepiphone(エピフォン)製アコースティックギターの初露出となりました。
「クロノスタシス」の歌詞の意味
地元の友人とのエピソード
クロノスタシス 3:00〜
ビルボードの上 雲の隙間に
小さな点滅を見送った
ここにいると教えるみたいに
遠くなって消えていった
引用元:クロノスタシス / 藤原基央 (2022年)
藤原さんは、数年前に同級生の友人と上空を点滅して通過する飛行物体を見て、UFOではないかと盛り上がり、よく調べたらISS(国際宇宙ステーション)と判明した、ということがありました。
そして最近、その友人と上空を点滅する飛行機を見て「同じようなことがあったね」という話をしました。そんなとりとめもない瞬間を歌詞にしたといいます。
藤原 – 空を横切っていく点滅を見ながらそんな取り止めもない話をしたんですよね。そのことを書いてますね。その時に思った何かをこういう歌詞にして書いてます。
引用元:「MUSICA」(2022年4月号 p.35)
ありふれた日常的な何かから、詞を生み出すことの心の機敏さを持つ藤原さん。「クロノスタシス」では記憶と言葉について何かを読み取ろうとしています。
時間にとらえられている
クロノスタシス 3:00〜
飾られた絵画の中のように
秒針の止まった記憶の中
鮮明に繰り返す 君の声が
運んできた答えを まだ
しまっていた言葉を 今 探している
引用元:クロノスタシス/ 藤原基央 (2022年)
藤原 – その瞬間から逃してもらえないみたいな、その瞬間に閉じ込められちゃったみたいな、そういう感覚っていうのかな。
引用元:「MUSICA」(2022年4月号 p.35)
藤原さんは、時間は進むけれども答えの出せていない状態を指し、逃げているのか進んでいるのかわからない時さえあると表現しています。
個人的な感想ですが、「オンリーロンリーグローリー」に出てくる <置いてかれた迷子 遅すぎた始まり> という一節を思い出しました。
「クロノスタシス」のタイトルの由来
「クロノスタシス」という言葉に特に強い思い入れがあったわけではない、という藤原さん。歌詞を書き上げた後に、タイトルとしてふさわしいと思い「クロノスタシス」と名付けました。
映画「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」主題歌
「クロノスタシス」は映画「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」の主題歌として起用されています。
通常、書き下ろし曲の場合はコメントなどで言及していますが、文章、テレビコメント含めて書き下ろしについて触れておらず、おそらく書き下ろしではないと推察されます。
SNS等では「名探偵コナン」に登場する安室透(降谷零)の心境を著した素晴らしい歌詞、というコメントもありますが、藤原さんがキャラクターの設定をどこまで知っていたのか真意は不明です。
「クロノスタシス」MV
映像監督 | 林響太朗 |
撮影日 | 2022年 |
ロケ地 | 静岡県熱海市 ホテルニューアカオ 静岡県熱海市 喫茶店サンバード |
「クロノスタシス」のMVは林響太朗氏が担当しました。撮影場所は静岡県熱海市にあるホテルニューアカオの跡地です。 増川さんが佇んでいるカフェらしき場所は、同市の喫茶店サンバードです。
「クロノスタシス」ライブ演奏記録
演奏回数 | 2回 |
演奏頻度 | ★☆☆☆☆ |
初披露 | 2022年 BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe 2/10-2/11 |
演奏ツアー・ライブ | 2022年 BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe 2/10-2/11 |
「クロノスタシス」は2022年7月に順延開催された「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 LIVE Silver Jubilee at Makuhari Messe 2/10-2/11」で初披露されました。
私が見た限りでは、藤原基央さんが初めてソニックのストラトモデルのメイプル指板を使用していました。曲終盤のファンク調のカッティングを弾いているのが印象的でした。
以上、BUMP OF CHICKENの「クロノスタシス」の歌詞の意味と制作エピソードについて解説しました。この記事を読んで新しい聴き方を見つけていただければ幸いです。