楽曲解説:天体観測 vol.1 – 藤原基央の主観と客観 – 解釈

3rd Single「天体観測」
2001年3月23日発売
作詞:作曲 藤原基央
作曲時期:2000年3〜8月
作詞時期:2000年8月〜
レコーディング時期:2001年12月〜

「天体観測」は2001年3月に発売された通算3枚目のシングル曲です。同曲はノンタイアップ、極端に低いメディア露出にも関わらずオリコン3位、58万枚を売り上げたBUMP OF CHICKEN最大のヒット曲です。

ボーカル・ギターの藤原基央さんが書く叙情的な詞と歌声、重厚なバンドサウンドときめ細かいアレンジが聴く人の心を掴みました。また2000年代初頭のインターネット黎明期のFLASHアニメカルチャー代表作として爆発的に広まりました。

今回は言わずと知れたBUMP OF CHICKENの名曲「天体観測」の解釈、解説について紹介します。




仮題「どっこいしょ」

ダイヤモンド以前にあった歌詞のない曲

2000年1月 THE LIVING DEAD制作
1月〜春 ラフメイカー完成
天体観測のコード進行とメロディー完成
7月より前 ダイヤモンド完成
11~12月 箱根に行きTitle of mine+1曲を書く
天体観測を書く

BUMP OF CHICKENは2000年9月に「ダイヤモンド」でメジャーデビューをしました。しかし実はダイヤモンドの作曲よりも以前に、天体観測のメロディとオケは出来上がっていました。

”天体観測”はね、実は”ダイヤモンド”よりも前に、オケと曲はできてたんだよね。ほとんどね。「THE LIVING DEAD」(2000年3月) が出来上がって、“ラフメイカー”ができて、で”天体観測”ってタイトルじゃなかったけど出来上がって。でも詞は書けなくて。で、”ダイヤモンド”ができたという。 - 藤原 –

歌詞のない状態の時の仮題は「どっこいしょ」でした。PVクリップ集 「jupiter」DVDの特典映像にダイヤモンドのPV撮影の休憩時間中に遊ぶメンバーたちの映像が収録されています。その時に藤原さんや直井さんが鉄棒のところで歌っている歌が「どっこいしょ」です(「ファーストキッスは投げキッス〜」という仮のサビ歌詞です)。そして詞のない状態のままその曲は一旦お預けになり、藤原さんはその間にダイヤモンドを書きました。

ダイヤモンドでメジャーデビュー後、藤原さんは久しぶりに藤原さん自身のことを歌いたいと思うようになりました。

久しぶりに俺のことを歌いてえなっって思って。俺がどうだ、僕がどうだっていう歌を書きたくって。 – 藤原 –

Title of mineと天体観測

箱根遠征、そして帰京

しかし藤原さんの作詞作業はなかなかうまく進まず、集中しようと3度(!)箱根の旅館にギターを持って出かけました。箱根では不規則な生活で、朝に景色をご飯を食べ、温泉に入りそして詞を書く日々でした。そしてそこで最初にできたのが”Title of mine”という曲でした。この曲は藤原さんの書こうとしていた「自分が思うことを書いた曲」です。結局箱根では2曲(Title of mineとキャッチボール)を書きましたが、「オケだけの曲(天体観測)」の歌詞は書けませんでした。

箱根で結局完成したのは2曲だったんですよ。で帰ってきて、環境云々より自分の気持ち次第だなっていうのにちょっと気付いて。んで、”天体観測”は自分ちで書いたの。 – 藤原 –

箱根で書いたTitle of mineは書きたかった「自分のこと」でしたが、その内容の重さになかなか歌うことができない状態が続きました。バンドでスタジオに入っている間も藤原さんだけが重々しい雰囲気が続いたそうです。

俺は要するにただのゲロみたいな曲(= Titile of mine) を書いちゃったわけだけど(笑)、箱根で。

曲を書く上での主観と客観


藤原さん曰く、Title of mineは完全に主観の曲として書きました。周囲が褒めていても、自分としてはどうなんだろう、エゴではないかと悩んだそうです。ただ客観的になる術、周りにうまく伝える術を大昔は知っていたのに、いつの間にか忘れてしまっていました。そんな表現者藤原基央としての主観、客観の間で揺れている時に、客観的に伝える方法を思い出して、東京の自宅で書いたのが天体観測でした。

「なんだ、これやればもっとみんなに伝わるじゃん!」みたいな感じ。そういう風になれてから書いたのが”天体観測”で。・・・でもそこへ行き着くまでは・・・なんか淋しかった(笑)- 藤原 – 



自分の哲学を天体観測に込める

Title of mineという主観的な曲を書き、その対極として主観を客観的に伝える方法として書いた天体観測。その歌詞の中に、藤原さんは自分の哲学を込めたといいます。

もう全部全部全部。日常も全部、含まれてるし、それから過去も未来も現在も、あと「人とは」とかそういうものとか、いろんな哲学とか、俺なりの。お前は俺は、全部含まれてて。その要素はすごく曖昧だから、この詩の中には幾つの要素が入ってるなんてはっきり言えないけれども、ほんといっぱいあって。– 藤原 – 

この曲は<宛名のない手紙>や<予報外れの雨>といった何かを暗示させる名詞が多く登場します。それは現在の藤原さんの書く「君」や「僕」、「痛み」、「思い」といった抽象的なものではなく、物質的なイメージのため聴き手それぞれが意味を推測することで、自分なりの解釈ができる曲になっています。

私個人としては、今の歌詞よりこの頃歌詞の方が文学的で好きです。特に「宛名のない手紙」という表現が好きです。

藤原基央と天体観測

自作のプラネタリウム以外にも、藤原さんは本の付録で天体観測をしようとしていました。

俺は学研のちっちゃい髪とかで筒とか作るやつで、一生懸命月を見ようとしてたしね。で絶対ね、みんなね、ほとんどの人はね、こう、望遠鏡買いたいなって思う時期があったりさ – 藤原 – 

今ではこの曲を抜きにしては語れない天体観測。この曲が生まれた背景には、藤原さんの苦悩とそれを乗り越えた経験があるのですね。その経験が最高の歌詞を紡ぎ、多くの若者の心を惹きつけたということは、ノンタイアップながら50万枚以上を売り上げたことで証明されました。

天体観測を聴くときに、こんなエピソードがあったのだと思い出してもらえれば、きっと新しい曲の見え方が出てくると思います。以上、簡単に紹介しました。