8th Album 『Butterflies』

BUMP OF CHICKEN「パレード」歌詞の意味と制作エピソード

8th Album 『Butterflies』
「パレード」

「パレード」はBUMP OF CHICKENが2014年11月にリリースした楽曲です。

「パレード」はボーカル・藤原基央さんによって2014年9月に作曲され、映画「寄生獣」主題歌として書き下ろされ、2ヶ月という非常に短い期間で制作されました。

藤原さんはどのような思いで「パレード」を制作したのか、歌詞の意味や制作エピソードについて解説します。




「パレード」基本情報

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2014年9月頃
録音時期 2014年9〜11月頃
収録作品 2014年11月29日 配信シングル「パレード」
2016年2月10日 アルバム「Butterflies」
ライブ初披露 2015年7月31日「BUMP OF CHICKEN Special Live 2015」インテックス大阪5号館公演

 

「パレード」作曲エピソード

「パレード」は映画「寄生獣」主題歌として、2014年秋頃にボーカル・ギター藤原基央さんによって作曲されます。

2014年8月 映画「寄生獣」主題歌のオファーが届く

引用元:映画「BUMP OF CHICKEN“WILLPOLIS 2014”劇場版」予告編

2014年7月31日、全国ツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR “WILLPOLIS 2014” FINAL」としてバンド史上初の東京ドーム公演で有終の美を飾りました。

ツアー終了後の8月、ひと息もつかぬ間に親交のある映画監督・山崎貴氏から映画「寄生獣」二部作の主題歌2曲(のちの「パレード」「コロニー」)のオファーをもらいます。

藤原 – 覚えてんのは、(東京)ドームが終わった後だな、この話をもらったのは。8月2周目ぐらいの時だったと思う。

引用元:Bay-fm「PONTSUKA!!」2014年11月23日

実際、オファーより前に山崎監督と藤原さんが会食をした際に、プライベートで「寄生獣」の映画を撮っていることを伝えられていました。しかし、その時はオファーはなかったそうです。

その後「寄生獣」の映画化の情報が公開され、他人事のように感じていたBUMP OF CHICKENのメンバーに公式にオファーが届きます。映画公開まで4ヶ月を切ったタイミングでした。

直井 「今!?」っていうようなギリギリのタイミングでしたね。
升 – 「この締め切りで!?」っていう(笑)。

引用元:音楽ナタリー

直井 – これ(寄生獣)楽しみだ、って言ってたら舞い降りてきましたね。

引用元:Bay-fm「PONTSUKA!!」2014年11月20日

この時、藤原さんは先に進んでいた企画『BUMP OF CHICKEN meets 3月のライオン』のために「ファイター」を書く必要がありました。さらに「寄生獣」が二部作であったため映画用に2曲書き下ろす必要があり、急に忙しくなります。

それまでも作品タイアップはありましたが、このような連続タイアップは初めてのことでした。この時期からBUMP OF CHICKENのタイアップ重点戦略がはじまったと言えます。

2014年11月28日 2014年11月29日 2015年4月22日 2015年4月22日
「ファイター」 「パレード」 「コロニー」 「Hello, world!」
「3月のライオン」 「寄生獣」 「寄生獣 完結編」 「血界戦線」

2014年9月「ファイター」に続けて書く

配信シングル「ファイター」

2014年8〜9月、まず藤原さんは漫画「3月のライオン」のために「ファイター」の作曲をします。2日連続でスタジオを押さえていたとき、2日目午前中に山崎監督から「寄生獣」の製作中の映像を見せてもらいました




藤原 – この2日間で「ファイター」(の作曲)を仕上げようっていってたんだけど。2日目スタジオ行こうかなっていう時に、午前中に「寄生獣」を観せてくれるってなって。超怖えってなって、超怖ぇってなりながら「ファイター」を書いてました。

引用元:Bay-fm「PONTSUKA!!」2014年11月23日

藤原さんはこの時の状況を「3月のライオン」と「寄生獣」の2つの世界のパラレルワールドだった、と表現しています。そして「ファイター」の完成に続いて、藤原さんは「パレード」を作曲します。

BUMP OF CHICKENと「寄生獣」のつながり

漫画版「寄生獣」(岩明均)

原作の漫画版「寄生獣」について、藤原さんは10代の時に読んだことがあると語っています。

藤原 – (コミック版は)僕らも10代の時には語り合った作品だし、山崎監督の大ファンなので主題歌のオファーはビックリしたけれど嬉しかった

出典:2014年10月30日 映画「寄生獣」舞台挨拶

2014年10月30日、映画「寄生獣」公開記念舞台挨拶の場にBUMP OF CHICKENのメンバー全員が登場します。

映画関連のイベントとしては、「sailing day」とタイアップした「ONE PIECE  THE MOVIE デッドエンドの冒険」のミニ試写会ライブ以来の登場となりました。

「パレード」歌詞の意味

映画「寄生獣」(監督・山崎貴 2014年)

「パレード」作詞のために藤原さんは映画「寄生獣」のストーリーを見せてもらいます。それは主人公になりきるためではなく、《BUMP OF CHICKEN》と《タイアップ作品》の重なる領域を抽出する作業でした。

藤原 – 主題歌のオファーをいただいたときに作品のストーリーを見て作っています。それは自分が主人公になりきるとか、ストーリーをなぞって曲を作るというわけではなくて、その作品の色や込められた思いに自分たちの表現したいことが重なるところがあるだろうかって考えるんです。そして、重なったところを過不足なく言葉と音で表現する。結果、できあがった曲が僕らの曲でないといけない。

こうして「パレード」(「寄生獣」主題歌)と「コロニー」(「寄生獣 完結編」主題歌)の歌詞を書いていきます。

焦りを感じた時の記憶と向きあう藤原

藤原 – どうしようもない大ピンチの時の焦りとか、切迫感とか、動悸が早くなったり息が苦しくなった時の記憶と向き合って書いてるなって

引用元:「CUT」2014年12月号

「パレード」の作詞の際に、藤原さんが焦ったり切羽詰まった状況の記憶と向き合ったと語っています。確かにそう感じさせる歌詞が「パレード」には登場します。

「パレード」0:43〜
途中のまま 止まったまま
時計に置いていかれる
歩かなきゃ 走らなきゃ
昨日に食べられる

引用元:「パレード」/ 藤原基央

「パレード」の歌詞について藤原さん自身が多く語ったことは多くなく、時間に迫られる感情や、切迫感のある雰囲気というのが数少ない情報になります。

「パレード」制作エピソード

公開までの時間が迫る中、「パレード」は2014年9月〜10月にかけてレコーディングされます。




「Butterflies」唯一の転調曲

「パレード」はBメロと大サビで転調している楽曲です。転調とは途中で調(キー)を変更すること音楽用語で、楽曲の雰囲気やドラマチックさを演出する効果があります。

BUMP OF CHICKENにおけるアルバム別転調曲の比率

「パレード」は「Butterflies」期(2014年8月ー2016年2月)において唯一転調している楽曲です。Bメロで転調する曲は「才悩人応援歌」「邂逅」などが挙げられます。

サビ全て違うコードで弾かれている

「パレード」では1サビ、2サビ、ラスサビの計3回サビが歌われていますが、その裏で鳴っているコード進行は全て異なります。

1番サビ F#m7 → AM7(onF#)
2番サビ D → E(onD)
ラスサビ F → G(onF)

*半音下げチューニング
同じメロディを違うコードの上に乗せる手法は、藤原さんの得意な手法です。しかし多くはラスサビやその手前で強調する時に使うパターンが多く(例:「透明飛行船」)、曲全てのサビを毎回変えるというのは「パレード」くらいです。

珍しいマイナーキー(短調)の楽曲

「パレード」のコードは収録時間3分55秒のうち3分13秒でマイナーコードが使用されており、BUMP OF CHICKENの楽曲においては使用率はトップクラスです。

1コーラス目(1番)を見ると
(Aメロ)F#m7
(Bメロ)Am7
(サビ)F#m7→EonF#(EonF#m)
というマイナーコードの連続となっており、短調曲と表現できるレベルです。藤原さんが《マイナーキーの曲》として表現した楽曲は、他に「ゼロ」があります。

藤原さんが感じ取った映画「寄生獣」の世界観、恐怖というものがマイナーコードの多用に現れているといえます。

変則チューニングのベースをプレイ

「パレード」のレコーディングではベーシスト・直井由文さんは5弦ベースを使用しています。BUMP OF CHICKENとしては3番目に使用された楽曲です。

5弦ベース使用曲 リリース年
arrows 2007年
モーターサイクル 2010年
「パレード」 2014年
シリウス 2018年
月虹 2019年

加えて「パレード」は変則チューニングのベースで演奏されています。

直井 – ベースは変則チューニングで、そのチューニングでしか弾けないフレーズになっていたりとかしますしね。

引用元:「MUSICA」2016年3月号

5弦ベースの4弦をF#に調律し(通常はE)、前述のF#mキーにおける高音+開放弦のコンビネーションサウンドを可能にしています。変則チューニングのベースで演奏される唯一のBUMP OF CHICKENの楽曲です。

藤原基央のギタリストとしての一面

「パレード」のイントロで流れるギターフレーズは他のBUMP OF CHICKENの楽曲と比較して、非常に難解でスリリングなメロディとなっています。

藤原 – ギターキッズはこのフレーズ、コピーしてみ?超楽しいよ?ハンマリングとスライドを多用して、非常に官能的なプレイを楽しめると思うんですけどねぇ。

引用元:「MUSICA」2016年3月号

藤原さんからギターの奏法について詳しく語られることは珍しく、ギタリスト・藤原基央としての強いこだわりが窺い知れます。

「パレード」MV

MV監督 山崎貴、八木竜一(白組)、花房真氏(白組)
MV撮影日 2014年11月27日

「パレード」のMVは映画「寄生獣」の主要映像スタッフによって制作されました。映画監督である山崎貴氏に加え、VFXチーム(白組)の八木氏と花房氏が参加し、プレゼン会議では三者三様の企画書を提出してBUMP OF CHICKENのメンバーは驚いたと語っています。

「パレード」ライブ演奏記録

2016年7月「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY”」日産スタジアム公演にて「パレード」演奏中のBa. 直井由文(画像埋込元:natalie.mu

演奏回数 9回  
初披露 2015年7月30日 BUMP OF CHICKEN Special Live 2015 インテックス大阪公演
最終演奏 2016年7月17日 BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY” 日産スタジアム公演
演奏ツアー 2015年「BUMP OF CHICKEN Special Live 2015」*全公演演奏
2015年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015
2016年「BFLY」*全公演演奏

「パレード」はこれまで9回演奏されており、演奏回数は少ないものの2作品で映像化されています。演奏回数が少ない理由としては、直井さんの5弦ベースを変則チューニングで弾いているためセトリに入れづらいなどが挙げられます。

「パレード」映像作品

アルバム「Butterflies」(初回限定盤)
(2015年8月2日 Special Live 2015 横浜アリー公演収録)
映像作品「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY”」

以上、BUMP OF CHICKENの「パレード」の歌詞の意味と制作エピソードについて紹介しました。