「Sleep Walking Orchestra」はBUMP OF CHICKENのアルバム「Iris」収録曲です。
タイトルの《Sleep Walking》とは英語で「夢遊病の〜」を意味する形容詞で、これに《Orchestra》を足した藤原さんの造語による曲名です。
TVアニメ『ダンジョン飯』の主題歌として書き下ろされた「Sleep Walking Orchestra」はどのように書かれたのか、歌詞の意味と制作エピソードについて紹介します。
SLEEP WALKING ORCHESTRA 基本情報
作詞・作曲 | 藤原基央 |
作曲時期 | 2022年12月〜2023年5月 |
録音時期 | 2023年7〜9月 |
収録作品 | 2023年12月11日 配信シングル「Sleep Walking Orchestra」 2024年9月4日 アルバム「Iris」 |
「Sleep Walking Orchestra」作曲背景
升秀夫の言葉がきっかけで「ダンジョン飯」のオファーを引き受ける
漫画「ダンジョン飯」のTVアニメ化に伴い、制作側からBUMP OF CHICKENに主題歌のオファーが届きます。
「ダンジョン飯」の読者だった藤原さん、作品を好きなことと主題歌を書くことは別のことだと捉えオファーを引き受けるか悩みます。
そんな藤原さんを後押ししたのはドラムス・升秀夫さんの言葉でした。
藤原 – 升くんが『いや、これは、藤くんがいつも書いていることだろう』と言ってくれたんですよ。『藤くんはいつも、生きることとか、死ぬこととか、お腹が減ることとか、ご飯食べることとか歌ってるじゃないか』って言われて(中略)そしたら、全然書けるなって思えたという。
引用元:「ROCKIN’ON JAPAN」2024年2月号
藤原さんは、これがきっかけで生まれた「Sleep Walking Orchestra」を《升くんが導いてくれた曲》と表現しています。
オファーを受ける気持ちは固まりつつも、全国ライブハウスツアー「Silver Jubilee」に専念するため返答を先送りし、ファイナル東京公演の前日にオファーを正式に引き受けました。
「Sleep Walking Orchestra」の歌詞の意味
「Sleep Walking Orchestra」の歌詞について、作詞をした藤原さんは以下のように語っています。
- 《BUMP OF CHICKEN》×《タイアップ作品》の重なる領域を歌詞にした
- 「ダンジョン飯」の登場人物の視点で書いてはいない
- 書き始めたら自動書記のように最後まで書き上げた
歌詞の具体的な部分について言及しているインタビューをもとに歌詞の意味を紐解いていきます。
自身の体験を描いた冒頭の歌詞
外から窓をくぐった光が 床に作った最初の友達
空っぽの手を容易く取られて 連れ出されてから夢の中引用元:「Sleep Walking Orchestra」/ 藤原基央
冒頭の歌詞は、藤原さんが実際に家の中の窓が作り出す影と遊んだ記憶から描きました。
藤原 – 1行目の《床に作った最初の友達》のくだりは、僕が幼少期に-窓から差し込む光が、床に、いろいろ模様を作ることがあるじゃないですか。(中略)そこに自分の影を落として、遊んでいたんです。
気がついたら夢中で影と遊んでおり、《自分が夢中にのめり込んでいくこと》の印象的な記憶だったといいます。そして藤原さんは、のめり込んだものを《音楽》に置き換えます。
音楽の悪魔に魅入られたBUMP OF CHICKEN
精魂尽くして楽曲制作し、演奏し、もう前に進めないほど状態になっても、またスタジオで曲作りをしている。その理由はなぜか、藤原さんは悪魔と友達になったと喩えます。
藤原 – きっと、悪魔と友達になったんですよね。音楽そのものなのか、音楽を司ってるのかわかんないですけど。(中略)きっと、そいつとじゃなきゃ見れない夢があって。その夢を見るのが、自分個人にとっても、4人全員にとっても非常に重要なことで。
「Sleep Walking Orchestra」で唄っている《悪魔》は決して悪いものではなく、超越的な何かに自分たちが魅入られている感覚を表現するための言葉だと語っています。
藤原 – 神様って言っても良いんですけど。天使って言ったって良いし、悪魔的な側面だってある。歌詞の冒頭部分はそういうことを書いていますね。
同じことをインタビュー配信でも語っています。
藤原 – 自分たちのこと書いてた様な気がするなぁと思いましたね。音楽っていうものに夢中になって、”悪魔”っていう言葉出てきますけど、そこに良いも悪いもなくって。それが破壊的に魅力だったんでしょうね。目も虚ろなままよだれ垂らしながら着いてきちゃった感じがあって。
参考:「Liner Voice+ BUMP OF CHICKEN 『Iris』」
15歳でバンドを組み、幼なじみ4人で続けてきたBUMP OF CHICKEN。その原動力は音楽の楽しさを追い求めることでした。まさしく自分たちのこれまで、そして今を歌った曲だと言えます。
「Sleep Walking Orchestra」制作エピソード
2023年7〜9月、「Sleep Walking Orchestra」と「青の朔日」の制作が行われます。乃木坂にあるSONY MUSIC STUDIOでレコーディングをしました。藤原さんは作曲段階でアレンジの完成イメージを持っていたといいます。
イントロのフレーズから作る
藤原 – サウンド面においては、イントロのどこの国ともつかないような大陸的なメロディがあるでしょ。あれを作るところから始まったんですね。あれを作っている時のイメージっていうのが、ある程度厚みのある児童文学。そういうのの表紙が自動的で開くようなイメージ、その時に鳴るようなイメージで作ってて。
出典:Spotify Liner Voice+「Iris」
「Sleep Walking Orchestra」のテーマフレーズは物語のはじまりをイメージしたといいます。特徴的なイントロのテーマフレーズはアイリッシュ(ケルト)要素とスラブ(東欧)要素の入っており、ダンジョン感を演出しています。
藤原さんはフレーズ先行で楽曲を作ることがあります。フレーズから作った曲としては「ダンデライオン」「同じドアをくぐれたら」「クロノスタシス」があります。
世界各地の楽器を使ったサウンドメイキング
「Sleep Walking Orchestra」の制作コンセプトを《とことん趣味に振り切る》と決め、地球上の色んな地域の音楽をバランスよく混ぜていきました。
藤原 – 地域も混ざってるし、楽器の構造も、種類も混ざっている。そういう感じで、音色の全体像を決めていって。フレーズも、地球の色んなところの要素を少しづつ入れていきましたね。
引用元:「ROCKIN’ON JAPAN」2024年2月号
ギターのテーマフレーズはアイルランドやスラブ音階を使用し、パーカッションは以下のような西欧、南米の打楽器を使用しています。
升秀夫 使用機材
使用打楽器 | 発祥国 | SNS投稿 |
バウロン(ボーラン) | アイルランド | 投稿1 投稿2 |
ボンボ | ペルー | 投稿 |
「Sleep Walking Orchestra」では西欧、東欧、南米、エレクトロと、世界各国の地域と時代をまたにかけたサウンドとなっています。
直井由文 レコーディング機材
ベース機材 | 使用アンプ |
Sadowsky 5 strings bass(白) | Walter Woods M-300 |
ベーシスト・直井由文さんは「Sleep Walking Orchestra」のレコーディング機材としてSadowsky 5弦ベース*とWalter Woods M-300のアンプの組合せを使用しました。(*後述のライブ使用機材とは別機材)
SadowskyとWALTER WOODSの組み合わせはえげつないです。えげちゃん。
今回の曲はこの組み合わせじゃなくてジャズベにた。
SWOはこの組み合わせ! pic.twitter.com/LIP0ZT3kzU— CHAMA (@boc_chama) January 14, 2024
また2番Aメロではシンセベースが入っています。
シングル版とアルバム版のアレンジの違い
「Sleep Walking Orchestra」は収録作品別に2つのバージョンが存在します。アルバム「Iris」収録版は曲の冒頭にコーラスが追加されています。
収録作品 | 収録時間 | 曲のイントロ |
![]() |
3分55秒 | ギターフレーズから始まる |
![]() |
4分17秒 | サビのコーラスからはじまりギターフレーズへと繋がる |
BUMP OF CHICKENの楽曲にはシングルとアルバムで微かにイントロのアレンジが変わったり、コーラスが追加されたりすることがあります。(「オンリーロンリーグローリー」「メーデー」「R.I.P.」「魔法の料理〜君から君へ〜」など)
「Sleep Walking Orchestra」MV
監督 | 佐伯雄一郎 |
撮影日 | 2023年12月 |
「Sleep Walking Orchestra」ライブ演奏記録
演奏回数 | 19回 |
初披露 | 2024年9月7日「Sphery Rendezvous」さいたまベルーナドーム公演 |
演奏ツアー | 2024年 BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 “Sphery Rendezvouz” |
TV演奏 | 2024年9月2日 TBS「CDTV!ライブ!」 |
「Sleep Walking Orchestra」はアルバム「Iris」のレコ発ツアー BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 “Sphery Rendezvous”で全公演演奏されました。
(インスト曲「Sphery Rendezvousのテーマ」を除くと)本編1曲目に演奏され、物語のはじまりを想起させる役割を担いました。
「Sleep Walking Orchestra」 ライブ演奏使用機材
「Sleep Walking Orchestra」のライブ使用機材は以下の通りです。
藤原基央 | Martin D-28 12 Strings |
増川弘明 | Gibson Les Paul Standard |
直井由文 | Sadowsky 5 Strings bass M-Audio/Axiom 25(2番Aメロのみ) |
以下で特徴について説明します。
藤原基央 ライブ使用機材
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12弦ギター(Martin D-28)を弾く藤原基央(Sleep Walking Orchestra MVよりスクリーンショット)
藤原さんは、PVと同じMartin D-28の12弦ギターを使用しています。ライブでの使用は「Sleep Walking Orchestra」が3曲目になります。
12弦ギター ライブ使用楽曲 | 使用ライブ |
「ホリデイ」 | BUMP OF CHICKEN 2012 TOUR “GOLD GLIDER TOUR” |
「孤独の合唱」 | BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY” |
「Sleep Walking Orchestra」 | BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 “Sphery Rendezvous” |
*「ホリデイ」はアコースティックバージョンでの演奏
直井由文 ライブ使用機材
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Sadowsky 5弦ベースを使用する直井由文(Sleep Walking Orchestra MVよりスクリーンショット)
ベーシスト・直井由文さんもMVと同じSadowskyの5弦ベースを使用しています。ライブでは2番AメロでMIDIキーボードを駆使してシンセベースとして弾いています。
MIDIキーボード ライブ使用楽曲 | 使用ツアー・ライブ |
「angel fall」 | BUMP OF CHICKEN TOUR 2012 “GOLD GLIDER TOUR” 他 |
「虹を待つ人」 | BUMP OF CHICKEN TOUR 2013 “WILLPOLIS” 他多数 |
「ファイター」 | BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY” 他 |
「コロニー」 | BUMP OF CHICKEN Special Live 2015 |
「邂逅」 | BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 “Sphery Rendezvous” |
増川弘明 ライブ使用機材
ギタリスト・増川さんはレスポール・スタンダードを使用していますが、MVとは違う機材です。アウトロの転調後のギターリフでは、ピッチシフターのエフェクターを使用して転調前と同じ指ポジションでギターを弾くというライブならではの奏法をしています。
「Sleep Walking Orchestra」ライブ映像
- 2024年9月2日 TBS系「CDTV ライブ!」
以上、BUMP OF CHICKEN「Sleep Walking Orchestra」の歌詞の意味と演奏法について解説しました。