楽曲解説:カルマ vol.1 歌詞の意味と「同じ旗の悲鳴」に込めた思い

カルマ:基本情報作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2004-2005年
録音時期:2005年
リリース:2005年11月22日 『カルマ/supernova』
ライブ初披露:2006年1月13日 run rabbit run at ZEPP SAPPORO

「カルマ」はBUMP OF CHICKENが2005年に発表した楽曲です。「天体観測」に次ぐシングル売上枚数を記録し、バンドを代表する1曲となっています。

「カルマ」とは仏教用語(『業』ごう)で”自分のなしたことことが自分に返ってくる”という因果を表す言葉です。藤原基央さんはなぜこの言葉をタイトルにつけたのでしょうか。この記事では歌詞の意味や楽曲の制作エピソードを紹介します。



ナムコから『テイルズオブジアビス』主題歌のオファーを受ける

2004年12月11日 PEGASUS YOU 幕張メッセ公演1日目 embedded from excite.jp

2004年頃、ゲーム会社「ナムコ」からBUMP OF CHICKENに対して『テイルズシリーズ』の新作主題歌のオファーが入ります。

BUMP OF CHICKENのメンバーは『テイルズオブジアビス』の企画書に目を通し、ナムコ側と何度も打合せをしました。

最終的にバンドの鳴らしたい音楽とゲームの方向が同じだということでタイアップを引き受けることになります。『ユグドラシル』を制作、リリース、MY PEGASUSツアーをやっている頃の話です。

カルマの意味は? – 仏教用語「業」

カルマ
カルマは「過去(世)での行為は、良い行為にせよ、悪い行為にせよ、いずれ必ず自分に返ってくる。」という因果応報の法則のことであり、インド占星術の土台であるヴェーダ哲学の根底に流れる思想である。

引用元:コトバンク 「カルマ

カルマ(梵: कर्मन् karman)は仏教用語で因果応報を示す言葉で、森羅万象全ての因果は繋がっているという思想を表しています。

しかし藤原さんは仏教的な意味を伝えようとする意図はありませんでした。

藤原基央がずっと書きたかったテーマ

宗教的な意味では使っていない

藤原さんは「宗教的な意味で使ったわけではない」といいます。歌詞の主題や意義を伝える上で当てはまる言葉が「カルマ」だったのかも知れません。



藤原 – 業って宗教用語ですよね。だけどそういう宗教的な意味合いで使ったわけではなくて、考え方によっては歌わなくてもよかったことかもしれないですけど、これについては結構昔から何度も考えてたんですね。だからこういう抽象的なものになった気がします。

出典:「B-PASS」2006年1月号

藤原さんは以前から「カルマ」というテーマを扱おうとしてきましたが、難解なテーマをあえて易しくわかりやすい歌詞にはしたくないという理由から敬遠していました。

syrup 16g 「神のカルマ」

syrup 16g 『coup d’Etat』(2002年6月)

syrup 16gはBUMP OF CHICKENとインディーズ時代から交流のあるバンドです。彼らの作品には「神のカルマ」(2002年)という楽曲があり、藤原基央さんも対バンツアー「B.O.C Presents BAUXiTE page1」で「神のカルマ」の生歌を聴いています。

「神のカルマ」が藤原さんの作曲テーマに影響を与えたかは不明ですが、藤原さんが同曲を認知していたのは事実です。

さっくり書き上げた歌詞

元のアイデアとして存在していたのはサビの歌詞です。

カルマ  1:38〜
必ず僕らは出会うだろう 同じ鼓動の音を目印にして

引用元:カルマ / 作詞作曲 藤原基央 (2005年)

サビの歌詞を軸にAメロやBメロといった部分を作詞しました。作業中は「ガーーーっと鳴らしてドーーーーっと書いた」といい、藤原さんの楽曲の中では比較的短い期間で書き上がります。

「カルマ」という言葉を肯定的に響かせる

藤原 – 「カルマ」って言葉を肯定的に響かせることが詩人としての僕の仕事なんじゃないかなって思います。…………そういうことは今までにもあった気がする。僕は「Everlasting lie」っていう歌で“嘘”というのを“約束”に近いものにしたし、“嘘”を“生きる力”にすることができたし。

引用:Excite「カルマ」INTERVIEW BUMP OF CHICKEN

「因果応報」という言葉を聞くとおどろおどろしいイメージを沸かせます。藤原さんは「言葉のネガティブなイメージは人間がつけたもの」として、自分なりの解釈で「カルマ」を伝えることを意識しました。

藤原 – この曲の場合には、「カルマ」っていうタイトルが、その物差しになっていると思うんです。<必ず僕らは出会うだろう>っていうフレーズに「カルマ」っていう言葉を当ててみて欲しいし、<鏡なんだ 僕ら互いに>っていうフレーズに「カルマ」っていう物差しを当てて計ってみて欲しい。

引用:Excite「カルマ」INTERVIEW BUMP OF CHICKEN

「同じ悲鳴の旗」の解釈

カルマ  1:40〜
初めて僕らは出会うだろう 同じ悲鳴の旗を目印にして

引用元:カルマ / 作詞作曲 藤原基央 (2005年)

「同じ悲鳴の旗」の解釈について藤原さん本人が説明をしています。

藤原 – 傷つけた自分と傷つけられた自分。どっちかわかんないけど、必ずそこにはパートナーが存在していて。例えば自分が傷つけた側で、向こうが傷つけられた側だとしたら、当然向こうは悲鳴をあげているだろうけど、それに気づいた時に自分も悲鳴をあげているんですよね。 (中略) 「同じ悲鳴の旗」っていうのはそういうことなんですよね。

出典:「B-PASS」2006年1月号

「傷ついた」「傷つけた」 や「喧嘩した」という行為は必ず対になるパートナーが存在しており、二人で一緒になって作り上げたものだと述べています。

傷つけた相手は「他者」にもなりますし「自分自身」かも知れません。藤原さんが好むモチーフ「鏡」とはこのような状態を指していると思われます。

同様の事を「ほんとのほんと」(2012年) でも歌っています。

ほんとのほんと  0:29〜
誰かが誰か傷つけて だからどちらも傷付いて
お揃いの気持ちで離れながら お揃いの気持ちで側にいた

引用元:ほんとのほんと / 作詞作曲 藤原基央 (2012年)

藤原さんの「同じ悲鳴」の説明と全く同じです!

「昔からずっと同じことしか書いていない」という藤原さん。同じことを書いています。「同じ悲鳴」という言葉は7年後に「ほんとのほんと」の歌詞で別の言い方で表現されています。

なぜこのようなことが起こるのか?それは藤原さんの作詞法に秘密があります。いつになるかわからないですが、いつか書きたいと思います。

藤原さんは一つの出来事で同じ旗を掲げているということに気づいた時、謝ったり、喧嘩したり、もう一回友達になったり、いずれにせよ「決着をつけるべき」だとしています。

「カルマ」はバラードだった?

『Bridge』 2013年6月号

「カルマ」のサビのメロディのアイデアは『ユグドラシル』(2004年) 制作時からあり、その時はもっと遅いテンポでした。ベストアルバム発売時のインタビューで作曲エピソードを語っています。

藤原 – カルマはマイナー調の速い曲なんですけど、最初はこのサビメロがもっとミドルかローくらいのテンポだったんですよ、どっちかっていうとバラードになるかもしれないネタのストックの中にあったメロディで。

出典:『bridge』 2013年6月号

BPMの変更についての明言するのは珍しいです。最近では「望遠のマーチ」がもともとゆっくりのファンク調のデモだったと明かしていますね。

速いテンポの理由は「カルマ」を表現するため

<静かな時にこの速度を求めたのはどうしてだと思いますか?>
藤原 – ……それが一つの力だったんでしょうね、「カルマ」ってものを表現するための。(中略) “カルマ”ってテーマをゆったりしたバラード調で、いかにもって感じで歌うのは……どうなのかしらね?って思いますね。

引用:Excite「カルマ」INTERVIEW BUMP OF CHICKEN

メロディのアイデアと歌詞のアイデアを一つにする際に、「カルマ」というテーマを表現するためにバラード調だったテンポを速くしました。

「カルマ」のBPM(=曲の速度)は2005年当時のBUMP OF CHICKENの楽曲で1番速い曲となります。

作曲時期の推定「カルマ」の練習のためにスタジオへ来ていたメンバーに「プラネタリウム」の生歌を聴かせたエピソードが2005年4月頃。そのため遅くとも2005年春先には「カルマ」は書き上げられていたことが推測される。

今回の記事を読んでくださった方には、カルマのもう一つの聴き方を体験していただければ嬉しいです。

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