「good friends」はBUMP OF CHICKENのCD『宇宙飛行士への手紙/モーターサイクル』に収録されているカップリング曲です。
「good friends」はBUMP OF CHICKENのリリース曲で唯一両A面シングルに収録されたカップリング曲です。“両A面シングルが好きではない”と明かすボーカル・藤原基央さんは、なぜ「good friends」をカップリング曲として収録したのでしょうか。
この記事では「good friends」の歌詞の意味、作曲背景、制作エピソードについてインタビュー記事をもとに解説していきます。
「good friends」基本情報

シングル「宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル」
作詞・作曲 | 藤原基央 |
編曲 | BUMP OF CHICKEN & MOR |
作曲時期 | 2010年5〜6月頃 |
制作時期 | 2010年7月27日〜8月 |
制作場所 | 一口坂スタジオ(東京都千代田区九段北) |
収録作品 | シングル『宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル』 |
ライブ披露 | なし |
「good friends」は両A面シングルに収録されている唯一のカップリング曲です。カップリングアルバムにも収録されていないため、BUMP OF CHICKENの楽曲の中でも非常に隠れた存在となっています。
「good friends」作曲エピソード
2010年5〜6月、「good friends」はボーカル・藤原基央さんによって作曲されます。
2009年以降の新しい作曲方法
2009年、BUMP OF CHICKENの作曲を担当する藤原さんは大きな変化を迎えました。ひとり自宅でしていた作曲を、プロデューサーに与えられてテーマで作曲したり、スタジオで曲作りするようになります。

「COSMONAUT」期における藤原基央の作曲手法の推移
作曲ペースが格段に上がり、BUMP OF CHICKEN 6枚目のアルバム「COSMONAUT」収録曲が生まれていきます。そのような作曲手法の変遷の時期において、「good friends」はスタジオ作曲(テーマなし)時代に書かれた楽曲のひとつです。
藤原 – (リクエストが)なにもないって言われて。『じゃあまあ、なんか書くわ』って。(中略)わりと打率良くて、そのうちの1曲。
2010年7月に実施されたインタビューにて《「good friends」が完成して2ヶ月経ってない》と発言していることから、「good friends」は2010年5〜6月に作曲されたと推測します。
同じくスタジオ作曲時代に書かれた「キャラバン」「イノセント」よりも新しく、「morning glow」の前に書かれた楽曲と比定できます。
カップリング曲として選ばれた「good frinends」
2010年、両A面シングル『宇宙飛行士への手紙/モーターサイクル』のリリースが決まります。しかし、藤原さんをはじめBUMP OF CHICKENのメンバーは”両A面シングル”というものに対して抵抗感がありました。
藤原 – 僕らは両A面とか、そんなに好きではないんですよね、形態としては。
理由としては、アルバムが既発シングル曲中心になってしまうことへの忌避や、ストックの楽曲を隠し球として残しておきたいと語っています。
そんな中で藤原さんたちメンバーが出した答えは、両A面シングルに初めてカップリング曲を収録するという試みでした。
上記の両A面(+トリプルA面)シングル6作品のうち、カップリング曲が収録されているのは『宇宙飛行士への手紙/モーターサイクル』だけです。「good friends」は唯一の両A面シングルのカップリング曲、と言い換えることができます。
「good friends」歌詞の意味
「good friends」とは訳すと「仲の良い友達」となります。複数形のsがついていること、後述の”コミュニケーション”というキーワードから自己を含めた関係性を指していると思われます。
歌詞を完成させるために詞の説明をしたくない
藤原さんはかねてから雑誌のインタビューで詞の意図や意味を問われると”リスナーに委ねたい”という主旨の発言をしています。「good friends」では一層その気持ちが強いと語っています。
藤原 – この歌詞を完成させるためには、俺がここで『こういうことだよ』って言わないことが大事だと思うんですよね。
歌詞に関しては無意識下で出てきた曲、コミュニケーションを歌った曲だといい、よく覚えていないまま出来上がったという旨を語っています。
これ以上は深堀りせず、”聴いたままで捉えてほしい”という藤原さんの気持ちを尊重したいと思います。
「good friends」制作エピソード
2010年7月、「good friends」の制作が東京都千代田区九段北にある一口坂スタジオで行われます。同曲の制作の様子はレコーディング潜入と題して音楽雑誌「MUSICA」で取材されています。
「good friends」制作現場の取材が掲載されている「MUSICA」2010年9月号
表打ちのドラムはプロデューサーのアイデア
「good friends」は軽快な表拍の4つ打ちのリズムが楽曲のノリを演出しています。藤原さんの中のアイデアではもともと8ビート、カントリーロックのイメージでしたが、BUMP OF CHICKENの5人目のメンバーともいえるプロデューサー・MOR氏から「表打ちのリズム」というアイデアがでます。
藤原 – 表打ちのドラムは完全にプロデューサーのアイデアですね。
引用元:「ROCKIN’ON JAPAN」2010年11月号
ドラムス・升秀夫さんは「good friends」のビートのノリを表現することに苦労したと明かしています。
升 – 単純にノリを出すのが難しいなって思ったりしますね。スピード感だったり。
升さんは4つ打ちのビートを極めるため、昔のモータウン・ビート(アメリカのレコードレーベル「モータウン」からリリースされた楽曲に多く使われた特徴的なドラムパターン)の楽曲を聴いて自分の音と比較したそうです。研究熱心な升さんの姿勢が読み取れます。
長時間の升秀夫のドラム録り
2010年7月27日、最初にリズム隊(ドラムとベース)のレコーディングを実施します。升さんのレコーディングにかける時間は非常に長時間で、BUMP OF CHICKENの楽曲制作の名物ともいえます。
藤原 – ヒデちゃんはアーティストなんだよ。だから満足しないの。そしていいポイントを逃していくの(笑)。それでも叩くのがヒデちゃんなんだよ。
「MUSICA」の記事で面白いのは、藤原さんは升さんがベストテイクに辿り着けないことを《体力の問題ではない》と指摘しているのに対し、直井さんは《いや、体力の問題もあると思う》と真逆の意見をぶつけているシーンです。
藤原さんの天才的な音楽性から、BUMP OF CHICKENのメンバーは藤原基央のの言いなりと揶揄されることもありますが、音楽性以外の部分(レコーディングに取り組む姿勢)ではきちんとメンバーで対等なコミュニケーションが取れていることがわかります。
増川さんのレコーディングでの役割や、他のアーティストとの交流など制作現場の取材ならではの内容が多く「MUSICA」のレコーディング取材は貴重な資料です。
使用ベース:Sonic Precision Bass Chama Pink “6号機”
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直井由文の使用機材:Sonic Precision Bass Chama Pink “6号機”
「good friends」ではSonic Precision Bass Chama Pink “6号機” を使用しています。この機材は同年5月に完成した直井さん(CHAMAさん)の新機材です。
「MUSICA」2010年9月号の記事写真には、レコーディングブースで演奏する直井さんの様子が写っており照明の関係で白または薄ピンクに見えます。その前段文章で新機材としてSonic Precision Bass Chama Pink “6号機” に言及していること、直井さんが新機材を制作に使用する傾向にあることなどの点から、当該機(6号機)の可能性が高いと思われます。
升さんと対照的にチャマさんは僅か30分強でレコーディングを終わらせました。これはインディーズ時代のレコーディングから爆速で録り終えるチャマさんが関係者証言されており、プレイスキルの高さを窺わせます。
瞬発力で生まれるギターフレーズ
藤原が所有するSonic製ストラトキャスター(メイプル指板)
2010年7月28日、ギターRECが同スタジオにて行われます。エレキとアコギによるベーシック録りからフレージングも藤原さんによってレコーディングされています。
RECブース内で使用されたかは不明ですが、「MUSICA」2010年9月号の写真ではSonic製ストラト(メイプル指板)を終始弾いている藤原さんの写真が多数掲載されています。但し、別の写真ではLowdenのアコースティックギターとGibsonの黒色のレスポールを手に取る藤原さんの姿があり、どの機材で録られたのかは不明です。
「good friends」のギターフレーズは全て瞬発的に作られたと言います。
プロデューサー – ほら、昨日弾いていたギターとは全然違うものになっちゃったでしょ?こういうものなんだよ。今日、このスタジオに来るまで、全然フレーズを考えないでやってるんだ。今、ここで全部作るの。
2004年にSpace Shower TVで「オンリーロンリーグローリー」のレコーディング映像が放映されたことがありますが、その時も瞬間的にフレーズを作る藤原さんが映っています。藤原さんのメロディアスなフレージング技術は類稀な才能です。
ハーモニカを使用する楽曲
「good friends」はイントロや間奏でハーモニカ(ブルース・ハープ)が使用されています。
2010年5〜6月、「good friends」作曲後のデモ制作時に、近くに置いてあったハーモニカを間奏に入れたことがきっかけでした。本番RECでは抜く可能性もあったとのことですが、最終的に本番でもハーモニカの音が入ることになりました。
他にハーモニカが使われているBUMP OF CHICKENの楽曲は「東京賛歌」「歩く幽霊」があります。
「good friends」ライブ演奏記録
演奏回数 | 0回 |
初演奏 | なし |
BUMP OF CHICKENのライブにおける「good friends」の演奏回数は0回です。
「COSMONAUT」期(2008年-2010年)は楽曲が多く生まれた時期であり、一度も演奏していない楽曲(「モーターサイクル」「キャラバン)やレコ発ツアーでしか演奏していない楽曲(「ウェザーリポート」「angel fall」「beautiful glider」)が多いです。
2017年以降、BUMP OF CHICKENのライブ活動ではあまり演奏してこなかった楽曲を演奏する傾向があります。同じくハーモニカを使用している「東京賛歌」「歩く幽霊」はライブで演奏されており、「good friends」が演奏される日も近いのではないでしょうか。
以上、「good friends」の歌詞の意味と制作エピソードでした。