「オンリーロンリーグローリー」は2004年7月7日にリリースされたBUMP OF CHICKENのシングル曲です。
ボーカル・ギター藤原基央さんは「この曲の詞を書くために多くのアルバム曲が生まれた」と語っており、「オンリーロンリーグローリー」はBUMP OF CHICKENの名盤『ユグドラシル』の集大成ともいえる楽曲となっています。
この記事では「オンリーロンリーグローリー」の歌詞の意味や制作背景について解説します。
「オンリーロンリーグローリー」基本情報
タイトル | 「オンリーロンリーグローリー」 |
作詞・作曲 | 藤原基央 |
編曲 | BUMP OF CHICKEN & MOR |
作曲期間 | 2002年〜2004年4月 |
作詞日 | 2004年4月11日 |
デモ制作 | 2003年夏〜秋 |
レコーディング | 2004年春 |
収録シングル | 2004年7月7日「オンリーロンリーグローリー」(c/w「睡眠時間」) |
収録アルバム | 2004年8月25日「ユグドラシル」 ・M-02「オンリーロンリーグローリー(アルバムエディット)」 2013年7月3日「BUMP OF CHICKEN Ⅰ1999-2004」 ・M-13「オンリーロンリーグローリー」 |
映像収録 | 2023年4月5日「SOUVENIR」(初回限定特典「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe Other Selection)収録 |
「オンリーロンリーグローリー」制作の概要
「オンリーロンリーグローリー」の意味
「オンリーロンリーグローリー」とは直訳すると”孤高の栄光(だけ)”という意味です。
「オンリー(Only)」は”〜だけ”という副詞、「ロンリー(Lonely)」は”孤独な/ひとりぼっち”という形容詞、「グローリー(Glory)」は”栄光”という名詞です。
これは藤原さんによる造語で、曲のアイデアができた時から決まっていたタイトルだといいます。
「オンリーロンリーグローリー」制作背景
「ロストマン」の頃からあった原型
「オンリーロンリーグローリー」は2年の歳月を経て完成した曲です。曲のはじまりは2002年1月〜9月、「ロストマン」の作詞期間まで遡ります。
藤原 – 取り掛かりは古くて、もう『ロストマン』と同じ頃から構築の1ピース目がすでに見えていた曲で。サビメロもあったし、サビのコード進行もなんとなくあって。
出典:「Quip Magazine」 vol.38
「ロストマン」を9ヶ月かけて作詞した後、藤原さんは「スノースマイル」「ホリデイ」「sailing day」の3曲を書き上げ、BUMP OF CHICKENのメンバーはレコーディングに入ります。
制作活動の傍ら、藤原さんは少しずつピースを構築していき「オンリーロンリーグローリー」のメロディを構築します。
歌詞のない状態で制作を進める
2003年夏から秋、「embrace」「同じドアをくぐれたら」のレコーディング後、この曲のアレンジをしていきます。
藤原 – プリプロ、いわゆるデモテープ録りですが、プリプロはだいぶ前にやってました。夏くらいですかね、去年の夏か
出典:「B-PASS」 2004年8月号
升 – ”オンリーロンリーグローリー”は、”embrace”とか録ってる時にはもうあったんじゃないかな。去年の秋ぐらいには、プリプロはもう終わって。
出典:「Rockin’on Japan」2004年9月号
この時のアレンジではギターはカッティングのみのシンプルなものでした。”ラララ”で仮歌を入れていたものの、サビのパートでは”タイトル”を無意識に歌っていました。
藤原 – 結構早い段階で鼻歌で歌ってたら、”オンリーロンリーグローリー”って歌っちゃったんで。そっからもう意識は動けなくなってしまって。
出典:SSTV – 「ユグドラシル」特集
但しスタッフにデモの曲名を尋ねられた藤原さんが「まだ(タイトルは)ないんですよ」と答えたところ、「数字の9」と勘違いし、『ナイン』とMDラベルに書いて保存されます。それ以後、作詞中に数字の”9″が頭に浮かんだといいます。
詞を付けようとして『ユグドラシル』のアルバム曲が生まれる
プリプロ制作後、「オンリーロンリーグローリー」の詞を書こうとした結果、別の曲が生まれます。
藤原さんは「ユグドラシル」の(「乗車権」を除く)アルバム曲の全ては「オンリーロンリーグローリー」を書く過程で生まれた曲だといいます。
藤原 -さあ、詞を書こうと思って書いてたら違う曲の詞になっちゃって、違う曲ができちゃったんですよ、そういうのを5、6回繰り返して。
「Bridge」2004年7月号
藤原 – ”オンリーロンリーグローリー”の曲があって、その曲の詩を書こうかなあと思って取りかかった結果、違う曲がいくつも生まれてしまったんですけれども。それが”ギルド”だったり、”同じドアをくぐれたら”だったりとか。確か”乗車権”とシングル曲以外、全部そうですね。
出典:ROCKIN’ON JAPAN 9月号
こうして先に出来上がった「車輪の唄」「レム」「fire sign」「太陽」「ギルド」のレコーディングを先に行い、「オンリーロンリーグローリー」は翌年春まで寝かせることになります。
「オンリーロンリーグローリー」の歌詞の意味
アルバム曲によって満たされた歌詞のピース
数々のアルバム曲と対峙した後、ついに「オンリーロンリーグローリー」の作詞に取り掛かります。2004年4月11日夜、25歳の誕生日を迎える直前に書き始めました。
藤原 – 1行目《そしてその身をどうするんだ》から最後までは、そんな時間がかかってないんですよね。ほんとにガーっと書いてってできて。推敲もほとんどしてないし
「Bridge」2004年7月号
アルバム曲の作曲を通して《足りなかった経験》が満たされ、一気に書き上げます。
藤原さんは同アルバムに収録されている「太陽」を例に出し、”ドアノブが取れってしまいそうだ”という「太陽」に対して『オンリーロンリーグローリー』は”ドアノブに触れたあとの曲”だと表現しています。
そしてその身をどうするんだ
この1番の歌い出しの部分は、ドアノブに触れようか触れまいか迷っている状況だった人が、自分の意思かそれとも誰かに押されたからか、その経緯は別にして「(ドアノブに触れて部屋から出た、)それでどうすんの?」という客観的状況を感情論抜きに問いかけています。
”そして、じゃあどうするんだよ?”っていう
《そして〜》という接続詞から始まる歌い出しで始まります。
藤原 – ”そして”の前には空白があるわけですけど、その空白は誰もが持ってるはずだと思ったし。そっから始めようと思ったんです”
出典:「B-PASS」 2004年8月号
いきなり接続詞から始めることについて、過去や未来のことではなく”今と向き合う”という主題が込められると明かします。
藤原 – もう、何があったとかはどうでもいいから……”そして、じゃあどうするんだよ?”っていう。そういう話なんですよ。そこで決着がどうついたかとか、そういうんじゃなくて、”そして、どうするんだ?”っていう
出典:「B-PASS」 2004年8月号
「ガラスのブルース」や「天体観測」で”今(イマ)”を歌ってきたのと同じく、今という現実を向き合うことをド直球に1行目からリスナーへ投げかけてきます。
「オンリーロンリーグローリー」レコーディング
「オンリーロンリーグローリー」は当初すぐにレコーディングされると考えていため、意図せず長い期間を経て向き合った曲となりました。
覚醒したBUMP OF CHICKENのメンバー
『ユグドラシル』制作では「曲の求める音」を出すために互いに指摘しあったり、意見を出し合ったりするなど、かつてないほどストイックにレコーディングに向き合いました。
藤原 – レコーディングは一に練習、二に練習。醜い部分も以前より互いに見合っていたし、受け止めるだけでなく、否定されたりしたりしていた。否定されていたまま泣き寝入りしていたわけではない。思い返すといろいろありましたねぇ、ずいぶんと暑苦しい事が(笑)
藤原 – 今回のレコーディングに入ってから、急激に音に責任とるようになった、みたいな。(中略)やっぱ覚醒した感じが他のメンバーにあって
出典:「B-PASS」 2004年8月号
2日間録音したドラムとベース
ベーシスト・直井由文さんとドラムス・升秀夫さんのリズム録りは2日間の時間を要します。
プリプロ制作から半年以上経ったことでプレイに迷いが出てきたため、藤原さんと会話をする中で升さんは自分が積み上げてきたものを壊して新しいアプローチを試みました。
藤原 – だから、こいつは自分がやってきた2年の歴史をサッと殺したわけですよ。すげーなって思いました。
出典:「Quip Magazine」 vol.38
升さんは《曲の求める音》を追求する求道者となっていることがわかります。
また「ヒゲ・ポーキン」や佐倉市民体育館でのフリーライブのライブ向けリハーサルの影響で、より”ライブ感”を意識したレコーディングになったといい、通常別のブースで録るドラムをベースと同じフロアに置いて2人で一発録りしました。
藤原 – (「ユグドラシル」のレコーディングで升のかっこよかった曲は)強いていうなら「オンリーロンリーグローリ」かな。鹿だよ、鹿。鹿になった、升は。
「PONTSUKA!!」2004年8月8日放送より
“ビッグバン”を意識したDメロ
間奏では直井さんによるスラップ奏法とギターによる逆再生フレーズが入ります。これは宇宙の始まりである”ビッグバン”のイメージを直井さんがメンバーに伝えました。
藤原 – チャマ解釈ではそこが宇宙の歴史でたとえたらビッグバン的な気持ちって言ってたんですね。「あ、それが俺にもあったんだな」って思ったんです。
出典:「Quip Magazine」 vol.38
通常スラップは別録りするものの、曲のノリを殺さないためにエンジニアの提案で一発録りの中でレコーディングされています。
間際に付け足された本能的なギター
プリプロの段階ではカッティングギターのみでしたが、レコーディングではウワモノと呼ばれる曲を飾るリフやアルペジオなどのギターが沢山追加されます。
藤原 – 正解とか不正解とか判断する前に、もう正解しかありえないという感じで。やれば絶対はまるっていうのがなんとなくわかってて。
出典:「Quip Magazine」 vol.38
藤原さんは動物的に、本能的にギターを追加していったといいます。この時の様子はSpace Shower TVで映像取材されており、藤原さんが瞬発的にギターフレーズを足していく様子が確認できます
イントロの異なる2つのバージョン
「オンリーロンリーグローリー」は正確には2つのバージョンが存在します。シングル版のイントロの前に藤原さんの多重コーラスが付け加えられた”アルバムエディット”バージョンです。これはプロデューサー・MOR氏のアイデアによるものです。
- 「オンリーロンリーグローリー」
- 収録時間:4分46秒
- 収録作品:シングル「オンリーロンリーグローリー」(2004年)、ベストアルバム「BUMP OF CHICKEN Ⅰ 1999-2004」(2013年)
- イントロ:ギターのコードストロークから開始
- 「オンリーロンリーグローリー(アルバムエディット)」
- 収録時間:4分51秒
- 収録作品:アルバム「ユグドラシル」(2004年)
- イントロ:藤原の多重コーラスのイントロで始まり、ギターが開始
2006年「run rabbit run」、2013年「WILLPOLIS」のワンマンツアーでは「ユグドラシル」から数年経ったにもかかわらず”アルバムエディット”バージョンで演奏されており、単なるアルバムバージョンではないというメンバーの認識の強さを感じさせます。
「オンリーロンリーグローリー」ライブ演奏記録
2004年12月「PEGASUS YOU」ライブステージ横からの写真(画像埋込元 excite.jp)
演奏回数 | 64回 |
演奏頻度 | ★★★☆☆ |
初披露 | 2004年9月17日「MY PEGASUS」ZEPP TOKYO公演 |
演奏ツアー |
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「オンリーロンリーグローリー」は2004年「MY PEGASUS」ツアーで初演奏されました。同じシングル曲の「メーデー」「虹を待つ人」と比較して回数は少ないものの、コンスタントに演奏されています。
藤原基央のTokai製ギターの初使用曲
2004年の「MY PAGASUS」ツアーでは「オンリーロンリーグローリー」演奏時にTokai製レスポール・モデルが初使用されています。
増川弘明の使用機材の多彩な変遷
「オンリーロンリーグローリー」は増川弘明さんの使用ギターが4回変わっている楽曲です。
演奏パートも変わっており、増川さんは2004〜2006年まではサビもコードストロークをしていたが、2013年からはサビではアルペジオのリフを弾くようになりました。増川さんのライブのサウンドへのこだわりが感じ取れます。
「オンリーロンリーグローリー」ライブ映像
2023年4月5日 シングル「SOUVENIR」初回限定版(CD+Blu-ray) |
「オンリーロンリーグローリー」は2023年4月リリースの「SOUVENIR」初回限定版に特典収録されています。2022年に開催されたワンマンライブ「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe」の模様が収録されています。
以上、「オンリーロンリーグローリー」の歌詞の意味、制作エピソードを解説しました。次にこの曲を聴くときは、こんな背景があったんだと思い出してみると新しい聴き方ができるかもしれませんね。